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恐らくおよそ子供に見せるにふさわしくない表情を浮かべていただろう俺は猪本の適度なフォローで何とか自分を抑えることが出来た。
添乗員としての役目を果たすため、バスが完全停止したところで腰をあげる。
そのまま一番前に進み出て、皆の注目をひいた。
「さてみなさん。お楽しみいただけでいますでしょうか?」
呼応してブーイングだか歓声だか判別のつかない一段と激しい怒号が起こる。
俺はそれをさも理解しているかのようにうんうんと頷いて
「ですが、このツアーの眼目はここからですよ!!いよいよ皆さまには、ミステリーを解いていただきます」
そう言って俺は合図にパチンと指を鳴らした。
正確に言えば鳴らしたつもりだったがその虚しい擦りをきっかけに、今まで閉じていたバスのカーテンを開ける。
両側のカーテンが、自動的にさっそうとスライドした。
「右手をご覧ください!!」
「「「ォぉぉおおおおおおおおおおおおッ!!!」」」
とりあえず声をあげたいだけだろみたいな轟音が巻き起こる。
それでもこの演出がもたらしたらしい効果に俺は満足していた。
右手に見えるのは何を隠そう宇和海である。
リアス式海岸と黒潮によって熱帯に似た環境を持つことになった特異な海。
俺はカンペをチラ見しながら
「皆さんには、まず第一として、ここで巻き起こる事件を解いていただきます。」
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