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その麓の河原に、甲冑に身をやつした集団がうごめいている。 何十人。 いや、下手すれば百人はいそうな群れだ。 遠目にも迫力のある、異様な雰囲気だった。 ドーンッ。 どこからか音がした。 歓声。 それに続く怒号。 合戦の再現だ。 大洲城の支配人はじまり有志が集まって、月に数回、この列車向けのパフォーマンスをしているのだ。 組み合う、のぼり旗の群れ。 上がる煙幕に、空の青さが滲む。 槍が宙を舞い、刀が何度も行き交う。 何も持たずに鎧一つで組み合う男達もいた。 とどろく悲鳴に、嬌声。 そして、パシャパシャいう保護者達のカメラの音だ。 インスタグラムにでも投稿するのだろう、子供達の次に目立っていたギャルっぽい大学生達も、きゃっきゃっとはしゃいで窓に寄っている。 それらを睥睨し、ドンっと構えている大洲城。 全てが合わさり、何ともカオスな空間だった。 少なくとも大人の恋愛が入り込む余地はない。 「あはは」 猪本は喜ぶべきなのか引くべきなのか決めかねているようで、とりあえず可憐に笑っている。 「……はぁ」 俺はため息をつき、頭を抱えた。 どうしてこうなった。
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