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いいこととか わるいこととか そんなのわからない 私は私の人生を歩んできただけで 他人の不幸も幸福も特に知りたいと思わない その人生の良し悪しの評価も必要としない。 灰色がかった空から 静かに舞い降りてくる白い粒 人は白い妖精なんていう人もいるが それは雪片であり 単に大気中の水蒸気から生成された 氷の結晶以外の何物でもない そして雪片は地上に落ちると積雪になる そこに何ら装飾はなく 自然の摂理が存在するだけだ 私は人が立ち入らない雪原を歩いてやってきた 一体何時間歩いたのかもわからなが 凍て付く大地と樹氷を踏みしめ 何度かの夜空と太陽を交互に見上げていた ただ遠くに来るためだけに必要とした ウィスキーのスキットル(※)はとっくの昔に空である 今日なのか明日なのかそれとも数年後か はたまた私のあずかり知らぬ後世なのか 私の冷えた肉体なり骨なりが 誰かの目に触れるかもしれないし 触れないのかもしれない もし、触れたのであればそれは 「ああ、道に迷い込んで暖を取れずに死んだのか」 そう思われるであろう しかしその頃の私はとっくの昔に帰らぬ人なのだから どうとでも思えばいい ※スキットル・・・アルコール度の高い酒を入れる携帯用容器(素材そのままの銀色が多い)
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