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「俺は本当に自分勝手に君を振り回してきた。だけどもうマネージャーとしての柵はなくなった。だから本音だけを言うよ」
カウンター席から立ち上がった都築は湊に微笑を向けて頭を撫でた。
「君たちが番になったらいいのに、って本当はずっと思っていたよ。もし俺の反対を押し切ってあの頃に番っていたら……全力で守るつもりだった。今更だけどね」
「……本当に……今更ですね」
なんだか泣きたくなって、顔を見られないように俯いた。
「君は優しすぎる。そして我慢をしすぎている。もう何の障害もなくなったよ。だから、我儘に生きていいと思う」
「……ありがとうございます」
都築がたまに見せてくれた優しさや気遣いを思い出して苦しくなった。
彼は彼でマネージャーとしての自分との柵に苦しんでいたのだろう。そう思うと恨むことも出来ない。最後まで狡い人だ。
お会計を終えて都築が店を出ていくのをカウンターの内側で突っ立ったまま見送った。
一度だけ振り返った都築はすっきりした顔をしていた。
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