5章 愛の天秤

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「別れてからすぐに彼女出来たらしいのになんで今頃ってやつだね。だから気にしなくて…」 「気にするって普通にっ!──晶さん俺が言いたいことわかってる?」 「………」 「元彼が逢いたいから会いに来るって言ってる場所に自分の彼女を送り出す男の気持ちってわかる!?」 「わ、かる…」 夏希ちゃんはあたしのうなじに顔を埋めたまま溜め息を吐く。 「晶さん…俺には地元に帰るなって言えないからっ──」 「──……」 「言えないから晶さんから帰らないって言って欲しいんだよっ……わかってよ!そこをっ…」 「……ごめん…」 「謝るのはどっちにとればいいの?…」 「親の顔は見たい…し、友達にも会いたいから…ごめん夏希ちゃん…」 夏希ちゃんの口からやり場のない溜め息が聞こえてくる。 夏希ちゃんはあたしを離すとベットに横になってあたしに背を向けた。 「もうっ…」 「……?」 「マジで手錠かけて監禁したいっ…」 「………」 壁に向かったまま、夏希ちゃんはそんな言葉を強く吐いた。
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