5章 愛の天秤

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・ この細いのにしっかりとした胸板があたしは好きだ。 案外逞しい。 前にスパイ役をしたとかで結構な筋トレをしたらしい。 なんでもスパイスーツがピッタリして身体のラインに凄く気を使ったのだとか…… 地味に大変なんだな役作りって… あたしを抱き締めるノースリーブのシャツから出た上腕の筋肉に、思わず見とれてしまいそうになる。 あたしはぎゅっと抱きつくと、夏希ちゃんの大きく開いた襟ぐりの胸元に唇を押し充てた。 空気を含んだ音が軽く鳴る。 夏希ちゃんがそれに合わせてぴくりとなる。 それがなんだか面白くてあたしはふふ、と笑いながら何度も同じ事を繰り返した。 「……っ…ああっもうっ!──そんなことしたらヤりたくなるって…っ」 「ごめん」 ついついやっちまったい… ちと反省。。。 夏希ちゃんに頭上から怒られたあたしは、目の前の胸板にしがみついて大人しくなった。 「晶さん……」 「ん?…」 「……っ…そこでやめるのズルくない?…」 「……?」 あたしのつむじに顔を埋め、唇を押し充てボソリと言う。 あたしは真上にあった夏希ちゃんの顔を見上げた。 途端に覆い被さる夏希ちゃんに唇を強く塞がれる。 おりょ? スイッチ入った? 「……っ…もう、晶さんて…やることかわいくてたまんないっ…」 「あっ…っ…」 モソモソと動き始めた夏希ちゃんの手があたしの胸をまさぐった。
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