5章 愛の天秤

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「荷物は纏まった?」 「うん、少ないから纏めるって程でもないけど…」 夏希ちゃんの新しい仕事。新ドラマの撮影が来週から始まる。 明日から夏希ちゃんは自分のマンションでの生活に戻る。その為、今夜は荷造りに追われていた。 荷造りって行っても元々が短期の旅行みたいなものだった為に荷物はとても少ない。 おまけに半分は次に泊まりに来たときの為にとあたしの部屋に置いていく予定。 歯ブラシや下着、ほとんど置いていくつもりでいるらしい… そうなると健兄にバレるのも時間の問題のような気もする… 「スペアキーは俺持ったままでも大丈夫かな?」 「いと思う。息子みたいなもんだって健兄言ってたし…」 「髭が?」 その問いにあたしは頷き返す。夏希ちゃんは微かな笑みを浮かべながら自分の荷物を紙袋一つに詰め込んでいた── 「晶さんどうしたの、考え込んだりして?」 荷造りを終えたらしい夏希ちゃんが、目の前でしゃがみ込むあたしの頬をクスリと笑いながら撫でた。
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