5章 愛の天秤

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夏希ちゃんの居候、最後の夜── 相変わらず月明かりを受けるベットで横になり手を握って向かい合う。 普通じゃ聞けないような話。芸能界の裏話や事務所の社長、健兄の愚痴。 そんな話をクスクスと笑いながら囁き声で語り見つめ合っていると枕元であたしの携帯電話が鳴り響いた。 「……多恵ちゃんだ…」 あたしは相手を確認して電話を受けた。 「高校のクラスメイト」 夏希ちゃんにそう教えてシーっと自分の口指をあてる。 夏希ちゃんは頷いて口を閉じていた。 「もしもし!」 「晶、元気?バイトはどう?」 「うん、なんとかやってるよ」 そう言いながら夏希ちゃんと顔を合わせて見つめ合う。 まさか芸能人の恋人が出来て今、隣にいるともいえず、近くから聞こえる会話に入るように、夏希ちゃんは電話越しの多恵ちゃんの声に耳を澄ませた。 「そっちはどう?お母さんは?」 「うん、お母さんも落ち着いたし八月からは店に戻るよ~、繁盛期だしね」 高校で大の仲良しだった多恵ちゃん。その実家は老舗の和菓子屋さんだ。こっちの大学に進学して二年目に、お母さんが倒れ多恵ちゃんは地元に帰ってしまった──その時一緒に住んでいたあたしは叔父の健兄を頼って居候生活に。 容態を訪ねたあたしに多恵ちゃんはそう答えていた。 「それよりさ、同窓会のメンバー高槻君が来るって!晶どうするっ?」 「えっ!?」 多恵ちゃんの口から突然出てきた男の名前── 腰に回っていた夏希ちゃんの手が間違いなくピクリと反応していた。
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