2旅のドルイド

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 朝日がステンドグラスを通って、いくつも煌びやかに変化する。 祭壇のキリスト像よりも優美で豪勢なつくりのそれは、どうしても初心者に勘違いをさせてしまう。  きらきら光る様々な色のカクテルで彩られた神の似姿と十字架で処刑されている貧相な男。なるほど妥当な勘違いである。ステンドグラスの神がこの貧相な男を打ち負かしたのだと。  本来、祈りとは力への畏怖である。自然という自身を超えたなにか恐れ多いものへの恐れと憧れ。その恩恵を享受するための手続きである。  必然的に神話の神々は強きもの、人智の及ばぬ力をもつのである。  なぜ処刑された男が神の子なのか。なぜその苦痛から逃れえるはずなのに、甘んじて責め苦を受けたのか。  ライラのみならず、初めて神の教えに触れる者達にとってありふれた疑問である。 「まっ、そういういのはお嬢が考えればいいことだしな」  カンタベリー大聖堂のクロッシングでぼんやりとしてしまった自分を戒めるようにライラは大声で軽口を叩いた。目の前で磔にされた神の子へ挑発するように。  ライラにとってそれはベルガの関心を集める嫉妬の対象でしかないのだ。 「さあ~て、調子はどうかな流れ者君」 「・・・」  大聖堂の敷地内にある宿舎。ライラが開口一番、エドウィンへ挨拶をした。しかし、エドウィンは無言のまま。  ちょうど神の子を模したように腕と脚をベッドへ縛られたエドウィン。  なにもライラは彼を苦しめたいわけではない。しかし、一度ベルガを襲ったにも関わらず、なんの釈明もしない男を放すわけにはいかないのである。  エドウィンは目が覚めても多くは語らなかった。ただ、自分がどこにいるか聞いただけ。
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