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「オレはお前のことを蹴ったんだから、それに対して恨み言を吐いたっていいんだぜ」
椅子に座りながら喋りだしたライラ。これは彼なりに機転を利かせたつもりである。
「良い蹴りだったな」
少し考えてからエドウィンが口を開いた。
「・・・なんだ、それ?」
「ライラといったか、優秀な戦士なのだろう。オレの剣を受けて、さらに鋭い蹴りで失神させた、見事だ」
「それどういう態度なんだよ、それに失神をしたのはお前が疲弊していたからだろう、蹴りの強さは関係ない」
「ふっ、そうか、謙虚なのだな」
エドウィンが鼻を鳴らして笑った。
「良い心がけだ」
「うーん、とりあえずお前のことは・・・嫌いだな」
呆れた表情でライラが答えた。
「ま、お話ついでに名前を教えてくれよ、いつまでも流れ者君じゃあ、バツが悪い」
「・・・エドだ」
エドウィンには、咄嗟に偽名を思いつく才能がなかった。
「ふ~ん・・・、なあこれお前のだろ?」
ライラは懐から例のダガーを見せた。
「っん!」
エドウィンの眼に殺気が宿る。
「これにはエドウィンって刻印されてる」
「まあ、エドウィンなんて珍しい名前じゃないしな、このダガーを見たときにはもしかしてデイラの王子なんじゃないかなんて馬鹿なことを考えたよ」
ライラは立ち上がった。
「エドウィン王子は既に海の向こうだっていうしな、エドってのはあだ名か?それとも本当にエドっていう名前でこのダガーは拾ったのか譲られたのか・・・」
ライラは水差しから器へ水を注ぐ。
「お前が話してくれないから、こっちもいろいろと詮索しちまう・・・まあ、飲みなよ」
器をエドウィンの口元へ運ぶ。
「ふん、人間だれにも言いたくないことはあるもんだ」
飲み終わると器をもとのテーブルへ戻した。
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