終章

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「『傾国の華』そして幻の桃源郷。玄武天皇……。素晴らしい夢を見せて貰った。 最後まで、彼らに関わり、守れた事。そして桔梗の花を通して代々守れる事を誇りに思う。先日の定期的手入れでテコ入れし直した。未来永劫、彼らを守る家宝として……」 「まぁ、お手入れ知らずで楽ちんですわね」  涙を(こら)え、夫の最期をかねてからの約束通り笑顔で看取る晴明の妻。 「満月と新月に月光浴させればな、大丈夫なのだ……。妻よ、お前に出会えて、 最高に幸せだった」 1005年冬。最愛の妻に看取られ、稀代の大陰陽師と言われた安倍晴明は穏やかに 息を引き取った。 ~1007年春。桜の花が咲き始める頃~  縁側で桜を愛でる千愛。胡坐をかき、その上に千愛を乗せ、背後から優しく抱きし める玄武。千愛のお腹は大きく膨らんでいる。 「二人目は、女の子かもな。お前によく似た」  と優しく囁き、愛し気に千愛のお腹を左手でさする。千愛は蕩けるような笑みで 夫を見上げた。  ましろが庭で、二歳くらいの男の子を抱いている。瞳が玄武に良く似て居る。 ゆっくりとましろは二人に近づいた。 「求道(もとみち)様は、妹君が欲しいそうですよ」  と、ましろは微笑んだ。千愛の桔梗の髪飾りが、陽の光に柔らかく輝く。 ……ホーホケキョ……  女の子だよ、と鴬が告げたように感じた。それは中庭で蹴鞠を楽しむ遼、朝信、 近俊、時峰、智成、そして右戸、左来も感じた。  少し離れたところで、双六に興じる菖蒲女御、梅花女御も。 蹴鞠を見物している彼女達の子供達と、お付きの侍従四人と乳母の二人。躑躅更衣と 楓更衣、その子供二人と侍従二人そして乳母二人も……。  こうして玄武上皇は(すめらぎ)一族としてひっそりと続いて行く。 優しい春風が、一同を優しく包み込み陽の光がふんわりと彼らを照らし出した。
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