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満員電車の中で窓に押し付けられながら、北野田、堺東と駅を通過して、急行難波行きはまもなく天下茶屋駅に到着しようかといったところ。 金剛駅で電車に乗った僕は、仕事場のある松ノ浜駅にいつも通り向かうために急行難波行きに乗り、そこから南海本線に乗り換えるという毎日のルートを辿っている。 問題なのは、今日は三国ヶ丘駅の辺りでいつもよりも減速して走行していたということだ。 あの辺りで減速すると時々起こる“アレ”に巻き込まれてしまう。準備しなくては。 ...と 考えているうちに、電車は駅に滑り込んで行く。 『天下茶屋、天下茶屋です。南海線、空港線と...』というアナウンスが聞こえ、向かい側のホームを見る。 ーーーやはり予感は当たってしまったようで、既に南海線の急行は扉が閉まりかけていた。 高野線の急行の扉が開き、階段へ向かう人だかりを避けてホームの南海線側で仕方なく次の電車を待つ。 「はぁ...」 と溜息をつき、時間を確認する。 あぁ...まあ間に合うんだけど、面倒だな...と、背後から朝のラッシュ時にしては大きい声で、 「あぁぁっ! ...行っちゃった...」 という声が聞こえた。
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