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それがきっかけで新太さんと話すようになり、彼が活動拠点のニューヨークから帰ってくると連絡をくれるようになったんだ。
そして、出会って半年が経ったある日、食事に誘われ代官山のイタリアンレストランに行くと彼は私をイメージして描いたというアクリル画を差し出し、甘い声で付き合って欲しいと囁いた。
夢を見ているようだった――
これぞ正しく人生の春。正体不明の美大生の冗談を真に受け、青春時代を台無しにしてしまった自分を世界一不幸な女だと思っていたけど、今の私は間違いなく世界一幸せだ。
これでやっと零士先生の呪縛から逃れられる。もう彼のことは思い出さない。綺麗さっぱり忘れられる。
私の心が解き放たれた瞬間だった……
でも、新太さんと付き合い始めたのはいいが、超遠距離恋愛でなかなか会えない。それに、彼が創作活動中は殆ど連絡がないから、未だに付き合っているという実感がない。
そういうワケだから、環ちゃんにのろけ話しをしたくてもネタがないのだ。
「それより、環ちゃん、午後からはちゃんと学校に行きなさい! 出席日数足りなくなるよ」
環ちゃんは不登校気味。祖父の館長が何も言わないことをいいことに、ほぼ毎日、ここに来て学校をサボっている。
「もぉ~ママみたいなこと言わないでよね」
「何言ってんの! 環ちゃんのこと心配して言ってるんだから。館長も環ちゃんにバシッと言ってやって!」
事務所の大きなガスストーブの前でウトウトと微睡んでいる館長に声を掛けるが、その姿はまるで蝋人形。全く反応がない。
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