甘美な視線

17/22

2791人が本棚に入れています
本棚に追加
/237ページ
「同士……?」 男と女の間に、下心が全くない純粋な友情は存在するのか…… 大学時代、その話題でゼミの仲間たちと真剣に討論したことがあった。あの時は最後まで意見が分かれて結論は出なかったけど、私は存在しない派だった。 とてつもなく自分の好みのタイプからかけ離れた人なら別だけど、好感の持てる相手なら親しくなれば意識するようになるのは当然のこと。かなりの確率でそれが愛情に変わるんじゃないの? だから、イケメンの零士先生と美人の薫さんがお互いを異性として意識していないなんて有り得ない。そう思ったのだけど……零士先生は、自分と薫さんとの間に恋愛感情はないと完全否定。 「でも、普段はクールな印象の薫さんが、零士先生のことになると凄く熱くなるんです。今日も零士先生が春華堂の社長になることが決まったって自分のことのように喜んでました。 それって、零士先生が好きだからじゃないんですか? 私にはそうとしか思えません」 そう断言すると苦笑いを浮かべた零士先生が少し間をおいて「薫ヤツ、お前にそんなことを言ったのか?」って大きく息を吐く。 「アイツは責任を感じているんだよ。だから俺を社長にしたいんだろう」 「責任?」 「俺が絵を描くきっかけを作ったのは、薫。薫が居なかったら俺は絵を描くことはなかった。アイツは今になってそのことを後悔しているんだよ」 遠い目をした零士先生が語り出したのは、ふたりがまだ中学生だった頃の話し――
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2791人が本棚に入れています
本棚に追加