溢れる愛

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「……常務、コーヒーが入りました」 零士先生は平然と頷いていたけど、私はその横で顔面蒼白だった。だって、後ろに居た飯島さんは零士先生が私の腰に手をまわし、耳元で囁いたのを見ていた可能性があったから。 薫さんの前でそのことを言われたらどうしよう…… それが一番不安だったけど、飯島さんはふたりが居る間、そのことには一切触れなかった。 もしかしたら見てなかったのかもと安心していたら、零士先生と薫さんが居なくなると急に真顔になり、カウンターに両肘を付いて私の顔をマジマジを見つめる。 「ねぇ、単刀直入に聞くけど、宇都宮さんと常務って付き合ってるの?」 「ぐっ……」 「出張から戻った常務が矢城さんに何も言わず、ここに直行するなんて今まで一度もなかったし、今日は朝一で顔を出した。それも初めてよ。だから、なんかおかしいと思ってたんだけど、さっきのあなたたちの様子を見てピンときたわ」 うわっ……飯島さん、やっぱり見てたんだ…… 「あわわ……ち、違います。私と常務はそういう関係じゃ……」 そう、実際、私たちの間にはまだ何もない。でも、飯島さんがあまりにも怖い顔で迫ってくるから動揺して声が上ずる。すると焦る私を凝視していた飯島さんが急にフッと笑った。 「……いいんじゃない?」 「えっ?」 飯島さんの真意が分からず困惑気味に首を傾げるも、私を見つめる彼女の目は爛々と輝いている。 「私、そういう意外な展開、結構好きよ」
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