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そしてオープンまでまで少し時間があるからと、カフェラテを入れてくれた飯島さんが意味深な笑みを浮かべ話し出したのは、意外な過去だった。
「このことは春華堂の誰にも言ってないんだけどね、実は私、常務や矢城さんと同じ中学出身なの」
「えぇっ! そうなんですか?」
零士先生はイケメンで目立っていたから校内では有名で、学年を問わず女子に人気があったそうだ。
「常務は一学年上だったから私のことなんて知らなかったと思うけど、私は彼の存在を知ってたわ」
心成しか飯島さんの頬が赤みを帯びているように見え、もしかしてと思っていたら……「彼は私の初恋の人なの」ってまさかのカミングアウト。
「そそそ、そうなんですか?」
「ええ、でも、彼の傍にはいつも矢城さんが居て、彼女、当時から凄く綺麗だったし、周りの常務ファンの娘たちも矢城さんには敵わないよねって話してたの。そんなだから、私の初恋は成就することなく儚く散ったってワケ」
零士先生は、お互い恋愛感情はなかったって言ってたけど、やっぱり周りから見れば、ふたりはそういう風に見えたんだな……
今も昔も同じだと妙に納得して大きく頷く。
「だから、以前勤めていた洋菓子店を辞めて次の仕事を探している時、春華堂のカフェの求人を見つけた時はドキッとしたわ」
飯島さんは、常務が春華堂の一人息子だと知っていたから、春華堂に就職すれば、憧れていた零士先生に会えるかもって思い応募したそうだ。
「えっ、じゃあ、飯島さんは今でも常務のことが好き……なんですか?」
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