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叫んだ弾みで思わずカフェラテを零しそうになり慌てるが、当の本人は虚ろな目でため息を漏らしている。
「まだ好きというより、初恋の常務にもう一度だけ会いたかったのよ。だから、面接官が常務だったらいいな……くらいの気持ちで応募したんだけど、まさか受かるとは思わなかったわ。それに残念ながら、私もう結婚しちゃってるし……」
「ええっ! 飯島さん、結婚してたんですかぁ~」
「あら、言ってなかったっけ?」
「言ってませんし、聞いてません!」
飯島さんは、結婚を早まったかもと苦笑している。
「でも、常務が矢城さんじゃく、宇都宮さんと付き合うとはね……」
いやいや、付き合ってないってば……
私も苦笑いを浮かべ否定しようとしたけど、飯島さんが突然真剣な顔で私の手を握るから驚いて言葉を呑み込む。
「本音を言えば、宇都宮さんに嫉妬してるわよ。でも、常務の相手が矢城さんじゃなくて良かったってホッとした方が大きいかな」
「えっ?」
なんとなく気付いてはいたが、飯島さんは薫さんのことをあまり快く思っていないようだ。
「矢城さんって、昔から常務を振り回しているってイメージだから、あまりいい印象ないのよね。でも、あのふたりはずっと一緒に居て色々あったけど、結局、縁がなかったってことか……」
「色々……ですか?」
「あぁ……うん、そりゃあ誰でも二十年も傍に居れば、色々あるでしょ? とにかく、春華堂の次期社長の彼女になったんだから、おめでたいことじゃない。良かったわね」
でも、良かったという言葉とは裏腹に飯島さんの表情は曇っていて、それが本当に彼女の本心なのかイマイチ判断できなかった。
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