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居心地の悪さを感じながら、カウンターに座った零士先生の横にチョコンと腰掛けモジモジしていると、体格のいい男性バーテンダーが笑顔で近付いてきた。
「よう、零士。久しぶりだな」
親し気に話し掛けてきたバーテンダーさんは暫く零士先生とお互いの近況を報告し合っていたが、ふと私に視線を向け、不思議そうな顔をする。
「零士が女性を連れて来るなんて珍しいな。もしかして……お前の彼女か?」
「あ、いえ、私は……」
否定しかけると零士先生が間髪入れず「あぁ、そうだ」って言葉を被せてきた。戸惑ったけど、それ以上になんの躊躇いもなく即答してくれたことが嬉しくて胸がキュンとする。
やっぱり私は零士先生が好きなんだ……改めてそう実感させられ、もう騙されてもいいから彼の胸に飛び込んでしまいたいと思ってしまう。
バーテンダーさんもまさかそんな答えが返ってくるとは思っていなかっのだろう「零士に彼女? これは大ニュースだな」と素っ頓狂な声を上げて私の顔を凝視する。
それから零士先生はバーボンとピザを、私はカクテルのシンガポールスリングを注文し、お疲れ様の乾杯をする。
「ここのマルゲリータは最高だぞ。お前も食ってみろ」
そんなにお腹は空いてなかったけど、バーテンダーさんの手前、食べないとマズいかなと思いピザに手を伸ばす。すると食べ慣れているいつものマルゲリータとは全然違っていて思わず「わっ! 美味しい!」と叫んでいた。
トマトソースが本当に美味しくて、たっぷりのモッツァレラチーズとの相性も抜群。口の中で広がるアクセントのバジルと黒コショウの香りがなんとも言えない。
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