溢れる愛

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すっかりハマってしまい、零士先生とバーテンダーさんの会話を聞きながらピザをパクついていたけど「中学の時は……」というワードが聞こえてきたので、つい会話に割り込んでしまった。 「あの、中学の時ってことは、もしかして……」 「あぁ、俺たちは、中学、高校と同じ学校の同級生だ」 薫さんと飯島さんに続き、また同じ中学の卒業生が登場だ。彼の名前は高木桔平(たがぎ きっぺい)さん。一時期、サッカー部でも一緒だったそうだ。 「でも、零士が絵を描きたいからサッカー部を辞るって聞いた時は驚いたなぁ~。コイツはね、サッカーのセンスが抜群で、一年からレギュラー入りするんじゃないかって言われていたのに、それを蹴って美術部に入部したんだよ。有り得ないだろ?」 バーボンが入ったグラスを傾け「またその話しか……」と呆れ顔の零士先生。するとその時、同じくカウンター内に居た女性のバーテンダーが近付いて来て、零士先生に軽く会釈する。 「でも、零士先輩の今の仕事から考えると、それはいい選択だったんじゃない?」 その女性バーテンダーは、桔平さんの妹だそうで、親から譲り受けたこのバーを兄妹で共同経営しているとのこと。そして彼女も零士先生と同じ中学出身。おまけに美術部だったから、零士先生とは、同じ部の先輩後輩の間柄。 でも、その愛花(あいか)と名乗った初対面のはずのバーテンダーさんと、どこかで会ったような気がしてならない。いや、会ったというより、その舌っ足らずの声に聞き覚えがあったんだ。が、必死で思い出そうとしたけど、全く思い出せない。
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