溢れる愛

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「じゃあ、薫さんとは……」 こんなことを桔平さんに聞くのはどうかと思ったが、自分を納得させる為、どうしてもそのことを確かめたかった。 「薫?」 「矢城薫さんです。彼と薫さんは学生時代からとても親しかったんですよね?」 桔平さんは私が何を聞きたいのか分かったようでクスリと笑う。 「それ、もしかして、嫉妬?」 「なっ、ち、違います! 嫉妬なんかじゃありません」 慌てて否定したけど、本当は嫉妬だという自覚があった。だから自分でも驚くほど動揺していたんだ。そんな私に桔平さんは諭すように言う。 「そういうことは僕より、零士本人に聞いた方がいい」 「あ、あぁ、そうですよね。すみません」 バカなことを聞いてしまったと後悔していると、桔平さんが二杯目のカクテルを私の前に滑らせ優しく微笑む。 「でもね、これだけは言える。あなたのこと、零士は本気だよ。ここにあなたを連れて来たのがその証拠だ」 「えっ」 「僕はアイツに言っていたんだよ。本気で好きになった女ができたらここに連れて来て紹介しろって。その約束通り、零士はあなたをここに連れて来た」 あ…… その言葉が全ての迷いを吹き飛ばしてくれた。 私は心の中で零士先生との間に壁を造っていたんだ。そのそびえ立つ高い壁をたった今、自ら壊した。 抑えていた想いが濁流のように流れ出し、全身に広がっていく。 あぁ……溢れる愛が止まらない…… 電話を終えて歩いて来る愛しい人を見つめ『素直になってもいいんだね?』って心で問いかけると、私を見た零士先生がニッコリ笑った。 私には、その笑顔が彼の返事のような気がしたんだ……
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