溢れる愛

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驚いて顔を上げると、まるで私の心の中を見透かしているかのように「やっと素直になれたな」って平然と微笑む顔が見える。 「十年前から俺のことが好きだったんだろ? そして今も……」 絶句して何も言えない。驚きと、そしてそれと同じくらいの恥ずかしさで顔がカッと熱くなり、その熱で体内のアルコールが気化して完全に蒸発してしまった。 「私の気持ちを……知ってた……?」 「お前が必死で気持ちを隠そうとしているところがいじらしくてな。可愛かったよ。そして何より、落ちそうでなかなか落ちないところ……そのもどかしさが堪らなかった」 零士先生は、今まで女に追われたことはあっても追うことはなかったから、初めての経験で新鮮だったそうだ。 それはつまり、零士先生が好きなくせに素直になれなかった私のヘタレな性格が功を奏したってワケ? 男女の駆け引きなど全く無縁な状態で生きてきたから、頭の中は"?"だらけ。ポカンとした顔で放心していると、私を見下ろした彼が不敵な笑みを浮かべる。 「だが、たった今、お前は落ちた」 「えっ?」 「もう遠慮はしないからな」 遠慮はしない――その言葉の裏にどんな意味があるのか……想像するだけで体が震える。 すると零士先生はタクシーの運転手さんに行先の変更を伝え、程なく速度を落としたタクシーの車窓から見えてきたのは、都会の空にそびえ立つ白亜のタワーマンション。
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