溢れる愛

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「――希穂……」 私を呼ぶ優しい声が聞こえる。 事が終わった後も零士先生は私を抱き締め、決して放そうとはしなかった。それが何より嬉しくて、まだ痛みが残る下腹部に触れ、大人の女性になった喜びを噛締めていると…… 「……でも、お前を抱くことになるとはな……十年前は想像もしてなかったよ」そう言って懐かしむように目を細める。 ってことは、十年前はなんとも想ってなかったってことか…… 私の一方的な片思いだったと分かり、ちょっぴりガッカリしたけど、環ちゃんが言ってたロリコンのド変態野郎ではなったということが判明して何気にホッとした。 じゃあ、零士先生はいつから私のことを女性として意識してくれるようになったんだろう? そのことを聞くと「再会した時、お前があの時の中学生だと気付いた時だ」って少し照れたように笑う。 「俺の中では何年経っても、お前はずっとあの時の幼い少女のままだった。それが突然大人の女性になって目の前に現れたんだ。ちょっとした衝撃だったよ」 そして零士先生は、まず一番初めに私を見て思ったこと、それは『描きたい……』だったと言った。 「あの頃と変わらないこの透き通るような白い肌に柔らかい黒髪。そして吸い込まれそうなその瞳――。ちょうど美術展覧会に出展する絵の題材を何にするか考えていた時だったから、よけいにそう思ったのかもしれないな」 「美術展覧会……ですか?」
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