愛情より深い友情

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――……「バカ! スリッパなんか揃えなくていい。急げ!」 起き上がったベッドに再び体を沈め、キスだけのつもりで零士先生の首に手をまわしたのだけど、いつしか時間が経つのも忘れ夢中で愛し合っていた。その結果、朝食を食べる時間が無くなり、慌ててマンションの部屋を飛び出す羽目に…… というワケで、今、エレベーターの中の鏡で乱れた髪を整えている。 「お前が欲しがるから、こんな時間になっちまったじゃないか」 「なっ、それは零士先生の方じゃないですかぁー! 私、言いましたよね? そろそろ会社に行く用意しないとって」 すると鏡越しに私と視線を合わせた彼が後ろから覆い被さってきて「……仕方ないだろ。放したくなかったんだ」って甘くトロけるような声で囁くから、まだ余韻が残る体が敏感に反応して心臓の音が凄いことになってる。 その胸に触れ、零士先生がフフッと笑うから余計に動揺してしまって鏡に映る自分の顔を直視できない。 「その表情、堪らないな。ベッドに戻りたくなる……」 「じょ……冗談はやめてください」 零士先生の言葉を真に受けて真剣に返すと「いいリアクションだ」ってギュッと抱締められる。でも、エレベーターが一階に到着して扉が開くと彼の表情が一変。私を小脇に抱えて玄関に向かって猛ダッシュ。さっき電話して呼んであったタクシーに乗り込む。 が、「銀座の春華堂まで、急いでくれ」と運転手を急かす零士先生の横で私は困惑していた。 「あの、私、電車で行くので適当な所で降ろしてください」
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