愛情より深い友情

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それは、そろそろランチの時間かなと腕時計を確認した時のことだった。零士先生がクライアントとの商談を終え、薫さんとカフェに顔を出したんだ。 どうやら例の裸婦画を初めに購入予定だった顧客との話し合いが上手くいったようで、無事売買契約を交わしてきたそうだ。 「そうですか……良かった」 ホッと胸を撫で下ろすと、機嫌良くカウンターに座った薫さんが私の肩をポンと叩く。 「希穂ちゃんも責任感じて気に病んだと思うけど、まぁ、いい勉強になったんじゃない。これからは感情に流されず、冷静にね」 そして今度は零士先生に視線を移し「常務も冷静な判断をお願いしたいわ」って嫌味混じりに釘をさす。 「はいはい、悪いのは俺だよ」 零士先生が飯島さんの入れたコーヒーを一口飲み、バツが悪そうに苦笑いを浮かべた時のこと。薫さんが触れて欲しくない話題を振ってきた。 「あ、そう言えば、常務、昨日は車を会社に置いて帰ったのね。飲みにでも行ったの?」 「あぁ、桔平の店に行ってな……タクシーで帰った」 「なんだそうだったの。桔平君の店なら私も行きたかったなぁ~ひとりで行くなんてズルい」 子供みたいに唇を尖らせ残念がる薫さんの姿はまるで恋人に甘える女子のようで、正直、心中穏やかではなかった。それでも零士先生との関係を知られたくなかったから素知らぬ顔をしていたのに、零士先生がいきなり爆弾発言をしてくれる。 「悪いな。昨日は大事な女を桔平に紹介しに行ってたんだ」 「……大事な……女?」 薫さんの表情が険しくなり、眉がピクリと動く。
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