愛情より深い友情

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「それってまさか、彼女ができたってこと?」 甲高い声が急に低くなり、尋常じゃないくらい大きく見開いた目からは今にも目玉が飛び出しそう。相当動揺してるのが見て取れる。 この反応は間違いなく嫉妬だよね? やっぱり薫さんは零士先生のことが好きなんだ。なのに零士先生は「まぁ、そういうことだ」って平然と答えて全く気にしてる様子はない。 もしかして……零士先生は薫さんの気持ちに気付いてない? 私が零士先生のことを十年前から好きだったって気付いてたのに、どうして薫さんの気持ちが分からないの? 余りにも矛盾し過ぎていて理解に苦しむ。が…… あ、零士先生は薫さんを親友、同志だって言ってたな。あれが本当に彼の本心なら、薫さんが自分のことを好きだなんて考えたこともないのかも。余りにも存在が近過ぎて鈍感になっていたり? でも、薫さんが零士先生を好きだというのはもう疑いようのない事実だ。 なんだか複雑な心境になり、更に後ろめたい気持ちが大きくなる。 そして薫さんは呆然と零士先生を見つめ「うそ……」と言ったまま暫し黙り込んでいたが、すぐに「それ、誰? 私の知ってる人?」って身を乗り出す。 それを見た飯島さんがちょっと白々しい咳払いをして私をチラリと見た。 ヤバい。このままじゃ、どちらかがバラしてしまう。 焦った私は薫さんの腕を掴み、勢いよく立ち上がる。 「か、薫さん、お昼まだですよね? ランチ行きましょ!」 「えっ、ちょっと待って。ランチに行くのはいいけど、まだ常務に聞きたいことが……」 「そんなの後でいいじゃないですか。私もうお腹ペコペコ」
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