愛情より深い友情

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「薫さんも……ですか?」 「そうよ。零士はもう本気で女性と付き合う気はないと思ってたから……」 あ……確か桔平さんも同じことを言ってたな。ふたりして同じことを言うからには何か理由があるはず。 しかしその質問に薫さんは苦笑いし「昔、ちょっとね……」と言葉を濁す。でも、そんな意味深な言い方されたらよけい気になる。 「ちょっとってなんですか?」 更に問い掛けると少し困ったような表情を見せた薫さんだっが、渋々って感じで話し出す。 「……まだ私達が十代だった頃。私と零士と桔平君でカラオケに行ったことがあったの。その時、結婚の話題になってね、零士が言ったのよ。自分は結婚はしないって」 「えっ? なぜ?」 「……さぁね? 聞いても言わなかったから……」 そして零士先生はその言葉通り、大学生になっても女性に興味を示さず、絵ばかり描いていたそうだ。 「零士にしつこく言い寄ってくる女はひとりやふたりじゃなかったわ。私も零士を紹介して欲しいって言われたこと何回もあったもの。けど、零士はそんな娘達を完全に無視してた。 だから希穂ちゃんと付き合ってるって聞いた時は、どういう心境の変化だろうって驚いたわ。でも、これでやっと私も肩の荷が下りた……」 「肩の荷が下りた?」 「そうよ。零士には、ずっと彼女作りなさいって言ってたの。あんなにいい男なのに独り身だなんてもったいないじゃない」
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