愛情より深い友情

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Arielの個展が開催されると決まった時から、当然のようにそう思っていた。しかし薫さんは苦笑いを浮かべ首を振る。 「残念ながら、もう"矢城ギャラリー"という画廊は存在しないわ。今の所有者は春華堂だもの」 「あ、そうか……」 そういう事情もあり、Arielの個展会場の名称をどうするかで揉めていたんだけど、Ariel側の希望もあり"春華堂&矢城ギャラリー"の名前で開催されることに決まったそうだ。 「零士がそうして欲しいって頑張ってくれたみたいでね……良かったわね。父さん」 「おぉ、またあの零士君が……彼には世話になってばかりいるなぁ~。一度会ってちゃんとお礼を言わないとな」 館長が零士先生に会ったのは、零士先生が中学生の頃。薫さんに連れられて矢城ギャラリーに絵画を観に来ていた時に二~三度、挨拶を交わしたことがあったらしい。でも、それ以来、直接は会ってはいないそうだ。 「二十年くらい前になるか……利発な少年だったから、立派な青年になっとるだろうなぁ~」 館長が感慨深げに呟いた直後、リビングのドアが開き、環ちゃんが帰って来た。 「あれ~希穂ちゃんじゃない。お久~」 「ホント、久しぶりだね。ちゃんと学校行ってる?」 「もぉ~いきなりそれ? ママがふたり居るみたいで気分悪い」 環ちゃんが私の隣りに座り、仏頂面でため息を付くと薫さんが環ちゃんを(たしな)め、お小言が始まる。そしてその説教はなかなか終わらない。 さすがに鬱陶しくなってきたのだろう。環ちゃんが食事もそこそこに立ち上がり、リビングの方に行こうとした時だった。突然「あっ!」と大声を上げる。 「希穂ちゃん、テレビ観て! このCMのバックの絵って、新太先生のじゃない?」
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