愛情より深い友情

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あ……じゃあ、あの時、零士先生が現れたのは偶然じゃなかったってこと? 「希穂ちゃんが元カレと顔を合わせてパーティー会場で大泣きでもしたら大変だ……なんて思ったのかもね。零士ったら、いいとこあるじゃない」 薫さんがそう言って微笑んでくれたことで、私の心の中の不安要素は全て取り除かれた。 零士先生と薫さんとの間には恋愛感情は存在しないと確信できたから。 これでもう誰に遠慮することなく零士先生を好きだと言える。そう思ったのだけど、薫さんに会社では私達が付き合っているってことは誰にも言わないようにと釘を刺されてしまった。 常務が一般社員と付き合っているということが知れれば、社内が騒がしくなり、仕事に支障が出る。それでなくても今は零士先生が社長になる為に一番大事な時期。あまり仕事以外のことで目立つのは良くない。というのが理由だった。 確かに私達のことが噂になれば、何かにつけ注目され仕事がしづらくなるのは事実。仕事とプライベートの線引きは必要なのかもしれない。 「分かりました。常務にもそう言っておきます」 「有難う。お願いね」 あくまでも常務秘書としての立場で話しをする薫さんを見て、零士先生が言っていたことを思い出していた。 薫さんは零士先生のお母さんのことで責任を感じてる。だから、どうしても零士先生を春華堂の社長にしたいんだ。 私には、その必死さが気の毒に思えてならなかった。
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