愛情より深い友情

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――翌日、矢城ギャラリー 「薫のヤツ、そんなこと言ってたのか?」 「はい……私たちの関係がバレたら、社長就任に響くからって……でも、零士先生が言ってた通り、薫さんは相当責任を感じてますね。零士先生が社長になるまで薫さんの気持ちは晴れないのかもしれない」 「ったく、薫が悪いワケじゃないのにな……本当に困ったヤツだ」 絵筆を持つ手を止めた零士先生が呆れ顔でため息を漏らす。 どうやら薫さんは、昨夜のことを零士先生には何も話していないようだ。生真面目な薫さんらしい。仕事中にそういう話しはしないんだ。 「まぁいい。わざわざ希穂との関係をオープンにする必要はないんだし、薫の気のすむようにしてやるさ」 「そうですね。でも、薫さんって、本当に一概なんですね」 「昔からそうだ。こうと思ったら周りが何を言っても聞く耳を持たない。真っすぐにしか生きられない不器用なヤツなんだよ。薫は……」 あ…… 薫さんのことなら何もかも全て知り尽くしている。そんな彼の言葉に少しだけ心が乱れた。 ヤダ、私ったら、ふたりの気持ちが分かって納得したはずのに、まだ薫さんのことを気にしてる。 心の狭い自分に未熟さを感じ、恥ずかしくて肩を窄めると零士先生が「疲れたか?」とキャンバスの向こうから顔を覗かせた。 「いえ、まだ平気です……」 慌ててそう答えたのだけど、なぜか零士先生はフッと笑い、床を軋ませながら近付いて来て私の隣りに座る。 「希穂が平気でも、俺が平気じゃなくなってきた」 「えっ……」
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