天然記念物級の女

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「そうでしたか。お客様が大勢来てくれるといいですね」 館長の想いがまた新たな才能を世に送り出そうとしている。そう思うと嬉しくて笑顔になるけど、デスクの上の電話が鳴り、環ちゃんの携帯番号がディスプレイに表示されるとその笑顔は一瞬にして消え去る。 震える手で受話器を取り、館長の容態を聞くと取りあえず命に別状はないとのこと。ホッと胸を撫で下ろす。 『おじいちゃん、お酒の飲み過ぎで肝硬変になってたみたい。それが原因で食道が腫れて出血があったんだって。暫くは入院しなきゃいけないみたいだよ』 「そう……肝臓だったの。まぁ、あれだけ飲んでたら悪くなって当然だよね」 『うん、ママもそう言ってた。それでね、ギャラリーの方だけど、ママが希穂ちゃんひとりじゃ大変だろうから、暫くは新たな予約は取らない方がいいんじゃないかって……』 あぁ、確かに……賃料は館長の言い値で決まってたし、私が決めるのはちょっとね…… 「そうだね。申し訳ないけど、館長が復帰するまで予約は断ることにするよ」 そう返事をして電話を切ったのだけど、受話器を置いた直後、予約申し込みの電話が掛かってきたんだ。電話の相手は若い女性。 「申し訳ございません。事情がありまして、現在、予約は受け付けておりません」 『えっ? そちらで個展を開けないということですか?』 「あ、はい。今のところは……ですが、予約して頂けるようになりましたら、こちらから連絡させて頂きます。もし宜しければ、連絡先をお聞かせ願えないでしょうか?」
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