誘惑のワケ

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四月――いつしか街路樹には新芽が芽吹き、爽やかな新緑の季節。降り注ぐ日差しも心地いい。 その後、私と零士先生の関係はすこぶる良好で、充実した日々を送っていた。そして来月にはいよいよArielの個展が始まる。私も春華堂側のスタッフとして運営に加わる予定だ。 で、環ちゃんはというと、零士先生が学校に行ったことで"父親犯罪者説"は消え、今度は凄いイケメンのパパだと噂されるようになっそうだ。 「でね、常務さんを見たクラスの娘が、あんな若くてイケメンのパパがいるなんて羨ましいって大騒ぎするから、他の娘達も興味持っちゃって、写真はないのかとかしつこく言ってくるから参っちゃったよ」 なんて言いながら、環ちゃん、凄く嬉しそう。酷いことを言っていた友人達も環ちゃんに謝ってきたらしく、今は学校をサボることなく真面目に学校に通ってる。 そして今日は零士先生がArielの代理人と夕食を兼ねて最終打ち合わせをするというので、久しぶりに環ちゃんと輝樹君を誘いイタリアンのお店に来て楽しいひと時を過ごしていたのだけど、環ちゃんが呟いた一言でちょっぴり後ろめたい気持ちになる。 「あ~ぁ、常務さんが本当のパパだったらなぁ~。ママと常務さん、結婚すればいいのに~」 すると何も知らない輝樹君が軽い口調で「じゃあ、お母さんにそう言ってみれば?」なんて言うから環ちゃんもその気になり、目を輝かせる。 「だよね。今度それとなくママに言ってみようかな?」 「そうだよ。ふたりは幼馴染みなんだし、案外、とんとん拍子に話しが進むかもしれないよ」
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