誘惑のワケ

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えっ? 私、何かいけないこと言った? 輝樹君が不機嫌になった理由が全く分からず、フォークを持ったままキョトンとしていたら、彼が妙なことを言い出した。 「その人、本当に信用できるのかな……」 「へっ? それ、どういうこと?」 「なんか嫌な予感がするんだけど……」 輝樹君が言うには、私が付き合っている画家……つまり、零士先生に騙されているんじゃないかと。なんでも、一部の画家は絵を描く時、モデルと疑似恋愛をするというのだ。 とんでもなく迷惑な予感に苦笑い。 「僕の周りにも、ワザとそうやって自分の気持ちを盛り上げて作品を創り上げるって人居るからね。でも、たちが悪いのは、その気持ちが本当に愛情だと勘違いする画家だよ。 絵を描いてる間は恋人だと思っているけど、絵が完成すると夢から覚めたみたいに、なんであんな娘が好きだったんだろう……って思うらしい」 「輝樹君は、私が付き合っている人が後者だと言いたいの?」 「それは断言できないけど、それもあり得るから気を付けた方がいいって話しさ」 要らぬ勘ぐりだと心の中で呟く私に、輝樹君は笑いながら衝撃的なことを言う。 「でね、そんな画家は決まってモデルにウエディングドレスとか着せたがるんだよね~」 「……ウエディングドレス?」 「そう、好きな女性に着せたいのは、やっぱウエディングドレスでしょ? でも、その"好き"は錯覚なんだけどね。で、希穂ちゃんはどんな衣装でモデルしてるの?」
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