誘惑のワケ

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『実は、桔平にパーティーに出席してくれって頼まれてな……』 なんでも、桔平さんがあの店を任されて今年で五年目になるそうで、日頃の感謝を込めて常連を集め、ちょっとしたパーティーを開くことになったらしい。 ふたりっきりのデートを期待していたから、ちょっとガッカリ。 『で、俺達にも来てくれって電話があったんだ』 「あ、でも、私はまだお店に一回しかお邪魔したことないから常連さんじゃないし……」 なんとなく気が引けて躊躇するが、零士先生はそんなの気にしないでいいと笑う。 『桔平に、必ず希穂を連れて来いって言われたよ。希穂は俺の彼女だから特別なんだろう』 そこまで言ってくれて断るのも悪いと思い、パーティーに出席すると約束した後で薫さんも招待されていると聞かされた。 「薫さんも?」 『あぁ、アイツも常連だからな。最近はよく桔平の店に顔出してるみたいだし』 薫さんの名前が出て環ちゃんが言ってたことを思い出し、それとなく薫さんの様子を聞いてみたが、特に変わったところはないと言う。 『薫がどうかしたのか?』 「う、うぅん、ここ何日か顔見てなかったから……元気ならいいの」 仕事で何かあったのかと思ったけど、傍に居る零士先生がそう言うのなら心配いらないか……と安心したのも束の間…… 『あ、それと、Arielの個展が開催される前に矢城ギャラリーから撤退しないとな。秘密のアトリエともお別れだ』 "お別れ"という言葉に敏感に反応して体が固まる。
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