あなたの傍に居たくて……

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「れ、零士先生……」 意表をつかれアタフタしている私を横目に、彼は自信満々に断言する。 「心配するな。あの人はちゃんと出頭して自分が犯した罪を償うよ」 「えっ?」 「好きな男に会う為に真っ当な人間になろうとしているんだ。信じてやれ」 そうだよね。だから私にお金を返しに来たんだもの。 零士先生の一言でやっと安堵し、微笑んだのだけど、大きな疑問が…… どうして零士先生がここに居るの? それは、私が春華堂を飛び出した後、飯島さんが零士先生に婦人から連絡があったことを喋ってしまったから。事情を知った零士先生は私の後を追ってホテルに来ると、私と婦人に気付かれないようにこっそり会話を聞いていたそうだ。 「あの人は希穂に謝りたかったからここに来たんだ。そこに俺が割り込んだらややこしくなるだろ? もちろん、何か問題が起こった時は出て行くつもりだったが……」 あ…… 仕事中なのに私を気遣い、わざわざホテルに来てくれたことが嬉しくて彼のスーツの裾をギュッと握り締めると、遠い目をした零士先生が独り言のような小さな声で呟く。 「あの年で刑務所暮らしは辛いだろうな」 「えっと……そのことなんですけど……」 縋るような目で零士先生を見上げれば、私の気持ちを察したように彼の大きな手が頭をポンポンと叩く。 「あの人には振り回されて迷惑を被ったが、金は全額戻てきたんだ。春華堂は被害届は出さないよ」 「あぁ……有難う」 ホッとして胸に抱えていた百万円が入った封筒を彼に返そうとしたのだけど、なぜか突き返された。
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