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暫くするとステージに桔平さんが登場して挨拶と感謝の言葉を述べ、ライブ演奏が始まった。ジャンルは年配の人が多いからか、ジャズやブルースがメインで私の知らない曲が続く。
なのでちょっぴり退屈になり、零士先生に「外の空気を吸ってくる」と声を掛け、ライブハウスを出た。
招待してくれた桔平さんには悪いけど、今の私はライブどころじゃない。いよいよ明日はモデル最後の日。私にとっては運命の日だ。
「はぁーっ……」
歩道の縁石に腰掛け、星の無い空を見上げため息を付く。
あくまでもあの話しは輝樹君の想像だ。実際にはなんの根拠もないただの憶測なのに、こんなに心配になるのはなぜ?
「そろそろ戻らないと……零士先生に変に思われちゃう」
もう一度大きく息を吐き、立ち上がると急な階段を上がってライブハウスの扉を開けた。しかし零士先生が居た所に彼の姿がない。
必死になって探すが辺りは薄暗く、大勢の人の中から零士先生を見つけるのは至難の業。
知らない人の中で独りぼっちだなんて……零士先生、どこに居るの?
一通りフロアを探しても見つからなかったのでトイレに行ったのかと思い、再びライブ会場を出てトイレに続く廊下をキョロキョロしながら歩いて行く。で、突き当りまで来て角を曲がろうとした時、その先から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「――こんな所に呼び出して……話しってなんだ?」
えっ? ……零士先生?
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