あなたの傍に居たくて……

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突然自分の話題になったことに驚き、壁から顔を覗かせると零士先生が小さく頷くのが見えた。 「あぁ……まだ言ってない」 「そうですか。でも、あの娘が本当のことを知ったら……きっとショックでしょうね」 「まぁな。確かに希穂があのことを知ったらショックを受けるだろうな」 いったいなんの話しをしてるの? 私がショックを受けることって何? 今までの会話だけでも十分ショックなのに、まだ他に何かあるって言うの? すると愛花さんが更に追い打ちを掛けるように「最後まで嘘を付きとおすつもりですか? なんだかあの娘が可哀想」なんて言うから、私のプライドはズタボロに傷付けられた。 私は零士先生の彼女なのに、同情されるくらい彼のこと何も知らないんだ…… 悲しみと悔しさで涙が溢れてくる。と、その時、後ろから足音が聞こえ、誰かが近付いてくるのが分かった。 こんな所に座り込んでいたら怪しまれるのは必至。なので急いで立ち上がり、何事もなかったように歩いてきた女性に会釈してその場を離れた。 しかし、ライブ会場に戻っても頭の中は混乱していて何をどうしていいか分からない。そうこうしていると演奏が終わり次のライブの為、ステージチェンジが始まる。その様子をぼんやり眺めていたら、前に立っていた女性ふたりが話し出した。 「ねぇ、零士君は来てるみたいだけど、薫は来てないよね?」 「うん、なんでもお父さんが急に入院したとかで来れなくなったそうだよ」 ……どうやらこの女性達は零士先生と薫さんの同級生のようだ。
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