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――翌日、私はある決意をして矢城ギャラリーに向かった。
その決意を口にしたのは、零士先生の絵が完成した直後。
「やっと終わった。約束通り見ていいぞ」
零士先生が私の元に歩み寄り、笑顔で手を差し出してくる。しかし私はその手を取ることなく立ち上がり、ウエディングドレスのファスナーに手を掛けた。
そして一呼吸置いてゆっくりファスナーを下ろすと締め付けられていた体がフワリと軽くなり、純白のドレスが肌の上を滑り落ちていく。
「……希穂?」
こんな明るい場所で裸体を晒すのは死ぬほど恥ずかしかった。でも、決めたことだから……
零士先生は全裸のまま佇む私を驚きの表情で見つめていたが、すぐに熱っぽい瞳で「もう欲しくなったのか?」と甘い声で囁いてソファーに押し倒そうとする。
彼に触れられた部分が熱く火照り、このまま零士先生に抱かれたいという衝動に駆られるも、流されちゃいけないと足を踏ん張り、大きく首を振った。
「違う。そうじゃなくて……」
「んっ?」
「零士先生の時間を買いたいの! 借金返済の為に零士先生が私の時間を買ってくれたように、私も零士先生の時間を買いたい!」
ありったけの声で叫び、ソファーの横に置いてあった鞄から白い封筒を取り出す。
「これは、あの時の百万……?」
「そう。詐欺師の婦人が返してくれた百万円だよ。零士先生はこれで欲しいモノを買えと言ってくれた。だから、今私が一番欲しいモノを買うの」
しかし零士先生は眉間にシワを刻み首を傾げている。
「で、俺の時間を買い取って何をするつもりだ?」
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