天然記念物級の女

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階段を上がってドアを開ければ、すぐに部屋の玄関。一人暮らしには大き過ぎるリビングが広がっている。他にもいくつか部屋はあるけど、使っているのはこのリビングとキッチン、そして寝室ってとこか。 靴を脱ぎ捨てるとリビングの隅にあるデスクに座り、逸る気持ちを抑えパソコンを立ち上げる。 新太さんが居るニューヨークとの時差は14時間。今向こうは朝の九時半頃だ。彼は十時くらいから創作活動を始めるから、その前にスカイプで話しをするのが私達の日課になっていた。 まだ眠そうな顔をした新太さんがパソコンの画面に映ると毎回、ドキッとして照れてしまう。 「新太さん、おはよう」 『あぁ、希穂は仕事お疲れ様』 私は新太さんの寝起きで少し掠れた声が大好き。出来れば、パソコンからじゃなく生で聞きたい。早く日本に帰ってきてって言いたいけど、そんなこと言ったら重い女だと思われそうで……だからグッと言葉を呑み込む。 『で、今日は何かあった?』 新太さんにそう聞かれたので、館長が倒れて救急車で運ばれたことと、輝樹君の個展が明日から始まると伝えた。 館長の様態を凄く心配してくれて、輝樹君のことは宜しく頼むと頭を下げる優しい新太さん。そして、Arielが矢城ギャラリーで個展を開くことになったと言うと驚きの表情を見せる。 『Arielが矢城ギャラリーで個展を開く? 本当なのか?』 「うん、半年後に新作の発表を兼ねて個展を開きたいんですって。でも、Arielが矢城ギャラリーを知ってたってことが驚きだよね~」
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