運命のイタズラ

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「カフェで働いてくれていた女性社員が結婚で退職することになってね、ハローワークに求人を出しているんだけど、ギャラリーに展示されている絵画の説明もできる人となるとなかなかいい人が居なくて…… でも、希穂ちゃんなら絵にも詳しいし、来店したお客様に説明もできるでしょ。社長に希穂ちゃんのこと話したら快く承諾したくれたの。それにね、社宅もあるから住む所も心配いらないわ。どう? ウチの会社に来ない?」 とてもいい話しだと思った。だって薫さんが勤めている会社は銀座の一等地に自社ビル兼店舗を構える上場企業だから。 元々、老舗の文具屋さんだったけど、今の社長になってから国内外のオークションで絵画や美術品の買い付けを始め急成長したと聞いている。 でも、そんな有り難いお誘いを受けても、突然のことでまだ気持ちの整理がつかない。だから少し考えさせて欲しいとお願いした。 矢城ギャラリー、無くなっちゃうのか…… 薫さんが帰ると事務所内をグルリと見渡し、ため息を漏らす。が、その時、私はとても大切なことを忘れていたことに気付く。 「あぁーっ! ヤバっ! Arielのこと言うの忘れた~」 館長が退院してきたらサプライズで報告しようと思っていたから、Arielが矢城ギャラリーで個展を開きたいと言ってきたことを秘密にしていたんだ。 Arielが個展開催を希望しているのは半年後。その頃にはもうここは閉館している。 「どうしよう……」
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