運命のイタズラ

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そこから私の必死の説得が始まった。すると館長も徐々に気が変わってきたようで、矢城ギャラリーの最後の個展は、Arielにお願いしようと言ってくれたんだ。 「でも、三ヶ月後に引き渡しが済めば、すぐに矢城ギャラリーを改装すると言っていたから向こうの都合もあるだろうし、薫に相談してみないとな」 館長がすぐさま薫さんに電話をし、引き渡しを五月まで待って欲しいとお願いしてくれたのだけど、薫さんはどんな事情があろうと契約を変更することはできないの一点張りで、とうとう館長と電話で大喧嘩になってしまった。 薫さんを怒鳴りつける館長を目の当たりにして、私は気付いたんだ。矢城ギャラリーの閉館を誰よりも悔やんでいるのは館長なんだって。 私には閉館するのは仕方ないなんて、飄々(ひょうひょう)と語っていたけど、本心は違っていたんだ。実際は断腸の思いで決断したんだよね。 そう思うと堪らなくなり、館長に電話を替わって欲しいと懇願していた。 「薫さん、希穂です。私からもお願いします。矢城ギャラリーの閉館を五月まで待ってもらえませんか?」 『希穂ちゃんまで……悪いけど、もう無理よ。でも、なんで急にそんなこと言い出したの? 父さんに聞いてもちゃんと説明してくれないらワケが分からなくて。なんか事情でもあるの?』 「あ、それは……」 館長がArielのことを言わないから、私が言っていいものか迷ってしまった。 まだちゃんと契約を交わしたワケじゃないから言わないのかな? でも、それを言わないと薫さんは絶対納得してくれないよね。
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