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しかし結局、Arielのことは言えず、薫さんとの電話を切ったのだけど、どうも納得いかなくて、館長になぜArielのことを言わなかったのか聞くと……
「Arielの方が公表していない情報をこちらから漏らすワケにはいかんだろ? それに、ワシはまだ向こうと何も話してない状態だし」
えっ……もう新太さんと輝樹君に喋っちゃったんだけど……取りあえず、それは黙っておこう。
「でも、それを言わないと薫さんだって首を縦に振ってくれないよ」
が、館長も頑固で、薫さん同様なかなか首を縦に振ってくれない。とうとう私に背を向けて布団を頭からスッポリ被ってしまった。
こんな時は何を言ってもダメだ。それに、さっきから隣のベットから冷たい視線を感じる。諦めた私は館長に「また来るから」と声を掛け、病室を出た。すると病院の玄関まで来たところでポケットの中のスマホが震え出す。
ディスプレイに表示されていた名前は"薫さん"。さっきの電話が気になったらしく、私に事情を聞こうと折り返し掛けてきたようだ。でも、館長に言われたことが引っ掛かり言い渋っていたら……
『引き渡しを延ばすにしても、社長に相談しないといけないし……今社長が戻って来たから希穂ちゃんから説明してくれない?』
「えっ、私がですか?」
『父さんはあんな調子だし、埒が明かないわ。春華堂のビルの玄関で待ってるから来てくれる?』
薫さんはそれだけ言うと電話を切ってしまい、私はどうしたものかと頭を抱える。
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