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閉館を延ばしてくれって言ったのは私だし、責任は感じる。それに、Arielの個展は何がなでも開催したい。館長には悪いが、春華堂の社長に事情を説明して分かってもらうしかないか……
タクシーに乗り、銀座通りを京橋方面に進んで行くと左手に春華堂のモスグリーンのビルが見えてきた。そのビルの前で停車したタクシーを降り、画材店の前に立つ。
自動ドアの硝子越しに、既に閉店している店舗を覗き込んでいるとブラックスーツを着た薫さんが私に気付いて駆け寄って来た。
「希穂ちゃん、ごめんなさいね。ったく……父さんったら、理由も言わず引き渡しを延ばしてくれだなんて、社長も困惑してるわ。希穂ちゃんは理由知ってるのよね?」
「え、えぇ……まぁ……」
「とにかく社長が待ってるから一緒に来て」
薫さんはかなり焦っていて、有無を言わさずフロアの奥にある社員専用のエレベーターに私を押し込む。
なんとなく勢いでここまで来ちゃったけど、春華堂の社長と話さなくちゃいけないと思うと急に緊張してきて、私如きが口を挟んでいいんだろうかと不安になってくる。
「あの、やっぱり私より、館長から聞いてもらった方がいいんじゃ……」
「何いってるの! あの頑固じじぃじゃどうにもならないから希穂ちゃんに来てもらったんじゃない」
社長室のドアを開けた半ギレ状態の薫さんに背中を力一杯押され、勢いよく室内に飛び込んでいくと大きなデスクに座ったロマンスグレーの男性と目が合う。
この人が春華堂の社長さん?
そう思った時、まだ社長に挨拶もしていないのに、薫さんが事情を説明しろと迫ってきた。
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