運命のイタズラ

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すると椅子に座っている私に覆い被さるようにジリジリと顔を近づけてきた輝樹君が低い声で呟く。 「僕たち後輩の間で新太先輩は、バージンキラーって呼ばれてるんだよ」 「……バージンキラー?」 そう叫んだのは私ではなく、いつの間にか事務所に入って来ていた環ちゃんだった。環ちゃんは長い髪を振り乱し輝樹君の腕を引っ張り叫ぶ。 「ちょっと、お兄さん、それ、どういうこと?」 突然現れた環ちゃんに面食らっていた輝樹君だったが、館長の孫だと分かると律儀に挨拶をしてため息混じりに話し出す。 「新太先輩は絵の才能があるから尊敬はしてるけど、女癖が悪くてね……出会った娘が処女だと分かると猛プッシュして自分のモノにするまで諦めないんだよ。 でも、一回寝るともう興味がなくなって音信不通になるんだ。そんなことを知らず、本気で新太先輩を好きになって泣いてた女の子を僕は何人も見てる。だから希穂ちゃんも、もしかしてって思ったんだよ」 うそ……あの優しい新太さんが、そんな酷いことする人だったなんて……信じられない。 俄かには信じられず、言葉もなく放心していると環ちゃんがワナワナと震え出し、私のデスクに拳を振り下ろす。 「希穂ちゃんを騙して処女を奪おうなんて、許せない!」 「環ちゃん……」 私のことを案じ、怒りを露わにする環ちゃんを見て、優しいところもあるんだ……と、感激したのも束の間、やっぱり彼女は小憎らしかった。 「初恋の人がド変態で、初めて付き合った人が最低男だなんて、希穂ちゃん、なんかバチが当たるような悪いことでもしたの?」
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