運命のイタズラ

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「悪いことなんてしてないっ!」 そう全力で否定した私を無視し、環ちゃんは真相を確かめないとと眉を吊り上げる。 「真相?」 「こうなったら、本人に直接聞くしかないよね?」 「はぁ? 本人って……まさか、新太さんに『あなたはバージンキラーですか?』って聞けっていうの?」 そんなの絶対無理だと抵抗したが、輝樹君まで新太さんの気持ちをちゃんと確かめた方がいいと真顔で頷く。 「そうと決まったら早い方がいいよ。希穂ちゃん、事務所は私が見てるから今から新太先生のとこに行っておいでよ」 プルプル首を振るも、輝樹君が「もうホテルに到着した頃じゃない?」なんて余計なことを言ってくれるから、環ちゃんに無理やり事務所から追い出されてしまった。 仕方なく新太さんが宿泊するホテルに向かったのだけど、私はまだ心のどこかで新太さんを信じていた。あの新太さんが何人もの女性を泣かせたバージンキラーだなんて有り得ないと。 半信半疑のままホテルに到着し、広いロビーに入るとひとつ大きな深呼吸をしてフロントに向かって歩き出す。するとチラリと視界に入ったフロント横のティーラウンジに見覚えのある背中を見つけた。 あれは……新太さん? スーツ姿の若い男性と談笑している声が微かに聞こえ、その背中が新太さんだと分かると一気に心臓がドクドクと暴れ出す。 暫くその背中を見つめどうしたものかと思案していたが、結局、ヘタレな私は真相を確かめるどころか、声を掛けることもできず、少し離れた彼の後ろの席に座るだけで精一杯。
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