運命のイタズラ

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遊ばれていたってだけでも結構な衝撃なのに、婚約者がいたなんて……酷い……酷過ぎるよ。 怒りに任せ、新太さんの横っ面を思いっきり引っ叩いてやろと立ち上がったのだけど、騙されていたことにも気づかず浮かれていた自分が惨めで、負け犬のようにコソコソとこの場を去ることしかできなかった。 零士先生といい、新太さんといい、どうして私はこんなに男運が悪いんだろう…… もしかしたら、環ちゃんが言うように、自分でも気付かない内にバチが当たるような何か悪いことをしていたとか? いやいや、もしそうだとしても、これはないでしょ? 悲しくて、悔しくて、大粒の涙が零れ落ちる。でもそれをすれ違う人たちに気付かれるのがイヤで下を向いたまま涙で滲むホテルのロビーを速足で突っ切って行く。 すると玄関を出たところで目の前の車寄せにタクシーが止まり、降りてきた男性が「あっ……」と声を上げた。その声につられ顔を上げるとダークブラウンの髪を風になびかせ、驚いた顔をした零士先生が立っていた。 ゲッ! 新太さんの次は零士先生? 今日は人生、最低最悪な日だ。 「あっ、君は、矢城ギャラリーの……」 「……失礼します!」 慌てて涙を拭い零士先生が降りたタクシーに乗り込もうとしたが、彼に腕を掴まれ引き戻される。 「どうした? なんで泣いてるんだ?」 「泣いてなんかいません!」 涙でぐしょぐしょの顔でバレバレの嘘を付き、零士先生の手を振り払ってタクシーに飛び乗った。 もう何もかもイヤ。マジで逃避行したい気分だ……
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