優しい嘘

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――二日後…… まだ失恋の傷が癒えず何もしたくない状態だったが、ギャラリーを閉めるワケにはいかない。責任感だけでなんとか仕事をこなし、ようやく閉館時間の午後七時を迎えた時だった。館長から電話が掛かってきた。 『希穂ちゃん、今夜、西島先生の画家活動四十周年と還暦祝いを兼ねたパーティーがあるのをすっかり忘れててね』 「はあ……」 『彼には新作を発表するたびに矢城ギャラリーを利用してもらってたから顔を出さないというのもなぁ~……。それでだ! 希穂ちゃん、ワシの代わりにパーティーに出てくれないか?』 「ええっ! 私がパーティーに?」 館長は軽く言ってくれるけど、西島先生は絵画界では巨匠と呼ばれている超有名人だ。そんな人のパーティーともなれば、お偉いさんたちがわんさとやってくる。そんな場違いな所に私が行けるワケがない。 「無理です!」と即答したけど、館長は諦めるどころか『希穂ちゃんにしか頼めないんだよ。老い先短いワシの最後の頼みをきいてくれ……』だなんて泣き落とし作戦で私を追い詰めてくる。 「でも私、パーティーに着て行く服もないし……やっぱ、無理です」 『あぁ、そのことなら心配いらないよ。薫に用意するよう電話しおいたからもうすぐそっちに行くと思う。あ、招待状はワシのデスクの引き出しの中だからね。じゃあ、宜しく~』 「えっ? ええっ? ちょっ……館長……」 切れたスマホを耳に当てたまま、暫し呆然。
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