優しい嘘

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今の私は絶賛、傷心中。新太さんのことで最高に落ち込んでいてパーティーどころじゃないのに…… そんなことを思いながら、脱力して天井を仰ぎ見ると事務所のドアが開き、薫さんが入ってきた。 「ヤダ、希穂ちゃん、時間がないのに、まだメイクもしてないの?」 「へっ?」 今朝は気分が落ち込んでいてメイクする気力もなくすっぴんだった。 「希穂ちゃんがどうしても西島先生のパーティーに出席したいって言ってるから私の服を貸してやってくれって父さんから電話があったのよ。だから仕事を切り上げて慌てて来たのに、何のんびりくつろいでいるのよ?」 はぁ? 私がどうしてもパーティーに出席したいですって? あの飲んだくれじいさん、私の返事を聞く前に薫さんにそんなこと言ってたんだ…… 館長の策略にまんまとハマってしまったと舌打ちするが、事情を知らない薫さんはバッグからメイク道具を取り出すと慣れた手付きで私にメイクをし始める。そしてメイクが終わり、渡されたのは光沢のある純白のワンピース。 仕方なく着替えるとサイズはピッタリ。おまけに、有名ブランドのピンヒールも私の足にジャストフィット。でも、こんな高いヒール履いたことないから足がプルプルする。 「一応、ワンピはシルクだからね。シミとか付けないでよ」 「う、うん……」 フワフワのショールを肩に掛けられ見事に変身した私は薫さんが呼んでくれたタクシーに乗り込み、渋々パーティー会場へと向かった。
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