優しい嘘

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さすがにそんな嘘はマズいと焦り、否定しようと口を開くが、零士先生の大きな手が容赦なく私の顔面を覆うから、喋るどころか呼吸もままならない。そうこうしていると零士先生がもう片方の手で新太さんの腕を引っ張り、不気味な笑みを浮かべた。 「新太、お前がこれ以上、俺の女を侮辱するならこっちにも考えがある」 「考え……だと?」 「あぁ、お前を絵の世界から抹殺してやる」 そんな物騒なことを言うと呆気に取られている新太さんの腕を突き放し、私を抱えたままクルリと向きを変え歩き出す。 何がどうなってるのか……放心したまま引きずられ、会場を出た所でようやく解放された。 「今の、どういうことですか?」 間髪入れず訊ねると、零士先生はシラッとした顔でサラッと言う。 「スッキリしたろ?」 「スッキリ?」 「お前、新太に騙されて食われそうになったんだってな」 「えっ?」 新太さんのことを知っているは、輝樹君と環ちゃんだけ。なのになぜ、零士先生がそのこと知ってるの? 呆然としてる私に彼は更に続ける。 「それなのに、文句も言えず悶々としてるって聞いたから、俺が仕返ししてやったんだ。感謝しろ」 「感謝って……その話し、誰に聞いたんですか?」 目ん玉をひん剥いて零士先生に詰め寄ると「薫に……な」ってアッサリ白状した。 あぁ、そうか。環ちゃんが薫さんに喋り、それが零士先生に伝わったんだ……
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