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先生に褒めてもらえたのは正直、嬉しかった。けれど、同級生の女子に比べるとまだ幼児体形から抜け出せないでいる自分の体は大きなコンプレックスで、その体を大好きな零士先生に見られるのは耐え難い屈辱だった。
「ダメか?」
そんなのダメに決まってるっ!!
心の中ではそう絶叫していたけど、顔を覗き込まれると言葉に詰まり「無理……」そう言うのが精一杯だった。
「そうか~まぁな、さすがに十三歳の娘を裸にするのはマズいか……じゃあ、お前が二十歳になるまで待つよ。二十歳になって大人になったら、モデルになってくれ」
「えっ……」
私が二十歳になったら? 七年も先のことなのに、それまで待ってくれるって言うの?
あっ! そうか……二十歳になれば、ペッタンコの胸も大きくなるだろうし、ウエストもキュッと締まって妖艶な腰つきになるはず。うん、そうだ。きっとそうだよね。
私は零士先生の"二十歳まで待つ"という言葉を愛の告白だと勝手に勘違いしてしまったんだ。だから「約束だぞ!」と笑う彼を見上げ、紅色に染まっているであろう頬を意識しつつ小さく頷いていた。
全身の血が沸騰しそうなくらいドキドキして、恥ずかしいという気持ちより、嬉しいという気持ちの方が大きくなっていく。
「忘れるなよ」
「う、うん」
それが、彼と交わした約束――……
その日以来、絵画教室のある土曜日を指折り数え楽しみに待っていたのだけど……次に絵画教室に行くと部屋に居たのは零士先生ではなく、以前、教えてくれていたおじいちゃん先生だった。
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