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零士先生をいい人だと思っている環ちゃんは、当然セクハラとはどういうことだと責め立ててくる。
すると輝樹君まで、あれから何人かの先輩に零士先生のことを聞いてみたが、悪く言う人はひとりもいなかったと零士先生を擁護するような発言をするから私は完全に孤立状態。
でも、百万円を体で返せと言われたなんて高校生の環ちゃんや男性の輝樹君に言えるはずもなく、セクハラ発言を撤回して私の思い違いだったと謝るしかなかった。
……最悪だ。こうなったら、あと二日。婦人が百万を返してくれるのを待つしかない。
――が、私のその願いは叶わず、約束の日になっても婦人からはなんの連絡もなかった。それだけでも結構なショックだったのに、それを遥かに上回る衝撃的な事件が勃発したんだ。
お昼休み直前に零士先生から内線が掛かってきてランチに誘われたので、百万円の返済の件だと思い渋々指定されたお寿司屋さんに向かう。
案内された個室で待っていると数分後に零士先生が現れて席に着くや否や、険しい表情で一枚のコピー用紙を差し出してきた。
「この絵に見覚えあるよな?」
「あるも何も……ご婦人に売却した裸婦画……ですよね?」
「あぁ、昔の恋人が自分をモデルに描いた思い出の絵……この絵と共に生きていきたい。あの婦人はそう言っていたよな?」
「はい。確かにそう言ってましたが……」
「なら、どうしてその大切な裸婦画が大阪の美術商の所にあるんだ?」
「えっ?」
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